厚生労働省

■全療協・日本療術学会の会員皆様に

『コロナ禍を克服しましょう!』

会 頭 佐藤 信紘(順天堂大学名誉教授・特任教授)

 長引くコロナ禍にあって、皆さんの生活のリズムが大きく崩れているのではないかと心配です。私たちの自由社会では、人はだれでも身体活動とともに文化活動や地域での活動を楽しんできました。しかしコロナ禍にあって、3密を避け、楽しく食べ語らう場が制限され、外出もままならないのが現状です。昨秋の日本療術学会での私の会頭講演要旨にて、身体・文化・地域活動すべてが行われなくなるとフレイルリスクが跳ね上がり、特に、身体の活動と文化的活動を併せて行うことが健康維持に必須であることを皆さんにお伝えしました。からだと心への刺激が人の健康の増進、さらに人としての尊厳に大切なのです。

 ここでは、新型コロナウィルスがどのようにして生まれ、どのような人に感染しやすいのか、感染を防御するにはどうすればよいのか、について、皆さんにお伝えして、日々療術にご苦労精励されている皆さんの健康を守る一助にしたいと思います。

 地球は誕生後、たえず火山爆発や地震・津波、嵐などで、熱を宇宙に放散して増大するエントロピーを低下、秩序化されてきました。私たちの身体を構成する分子や遺伝子、細胞も、バラバラに存在した原子や元素が互いに共鳴・共振して結合・融合・秩序化し、ネットワーク機構が組み立てられたのです。しかし、産業革命以降に異常に増えた人の営みにより、大気中の炭酸ガス濃度が増大し、気候変動、温暖化が生じ、豪雨災害などをもたらしました。自然環境の損壊により秩序化が緩み、蝙蝠などの動物界に常在していたウィルスが変異をきたし、ヒト感染を生みました。SARSやMERS,エボラ出血熱に始まり、2019年末から新型コロナウィルスSARS-CoV-2感染症(COVID-19)の世界的蔓延pandemicが生じ、本年4月2日の時点で、すでに世界中で1億2900万人の感染者、280万人を超す死者を出しています。

 わが国でも感染者数47万人、死者は9000人を超しましたが、幸いにも米・西欧・南米や中東、インド、ロシアに比して少ないのが現状です。一般にウィルス感染症は、その病原性・毒性と、人のウィルス受容体および細胞内侵入後の免疫防御能とのバランスにより、非感染か、感染しても症状が出ない無症状(不顕性)感染や重症度が決まります。日本に侵入した当初のウィルスは感受性や毒性が欧米型と異なり、全身の炎症をきたすサイトカインストームという現象や脳・心臓の動脈血管炎を比較的に起こしにくい変異型であったかもしれませんが、毎月2度は大きく変異するといわれるウイルスですから、今後は我が国でも感染率や致死率が高まる型が流行する可能性は否定できません。

 これまでのCOVID-19ウイルスは、主に会話や会食時の唾液の飛沫感染により口腔内舌・喉や鼻咽頭奥の粘膜に存在する受容体、Angiotensin Converting Enzyme-2(ACE-2)を介して、人細胞内に侵入して感染が成立しています。乳幼児ではほとんど感染が見られないのは、ウィルス受容体が少ないためか、唾液や粘液分泌などの細胞防御能が高いことが考えられます。一方、高齢者が感染リスク、死亡リスクが高いのは、免疫担当細胞の量的・質的変化が背景にあって、脱水や唾液・粘液分泌など第一線防御能が低く、また、ウイルス受容体、ACE-2の発現が多くウィルスを体内に容易に侵入させる可能性が考えられます。昨年のWHOと中国の共同調査では、持病のない人の致死率は1.4%に対し、循環器疾患患者では13.2%、糖尿病で9.2%、がん患者で7.6%と高く、高血圧、肥満、糖尿病や腎臓病、肝臓病、COPDなどの肺疾患を有する人にリスクが高いことが分かっています。

 日本は世界一の長寿国ですので、体質が長寿に関与する可能性もあります。外界からの異物や体内にできた異物(例えば癌細胞)に対する生体免疫防御能が高い人が多い可能性です。高い免疫能は如何にして作られるのでしょうか?これには、古くから育てられてきた自然環境の中にあって形作られた体の遺伝子構成が、免疫能を高めているのです。わが国の伝統的な、多様性のある、栄養豊かな食事、例えば、味噌や納豆などの発酵食品やヨーグルトなどの酪農製品をふくむ、マゴタチワヤサシイ(豆、ゴマ、卵、乳、わかめ、野菜、魚、椎茸、芋)を中心とした和食が免疫能を高め、日本人独自の腸内細菌叢の働きを高めるのではないかと私は考えています。日本人の腸内フローラに多量に存在するビフィズス菌が脳腸相関の働きを高め、認知症に予防的に働いていることも明らかになっています。

 さらに、筋力や免疫力アップに関与するタンパク合成を高めることが肝要です。時折に肉牛、豚・鶏肉を摂り入れ、筋タンパク合成を高め、自粛で運動不足に陥った体にリズミカルな刺激を与える、スクワットや腹背筋や足首を鍛える体操により骨・関節・筋肉などに自力と療術の力を借りて、細胞・組織の共鳴・共振を取り戻すことに努めて下さい。

 すでに、COVID-19 に対して効果的なワクチンが海外で作られ、ファイザー社製では1回の注射で80%、2回では95%を超える予防効果が報じられています。副反応は若い女性に少数見られますが、重篤なものは殆どないといってよいでしょう。ワクチン接種のメリットはリスクを上回ることは明らかです。療術医療に携わる皆さんは、可能な限り接種されることをお勧めします。

 皆さんが推進されている療術は、リズムを失った心身に刺激を与えて、神経内分泌免疫系の賦活により、リズミカルな心身の動きを取り戻し、自然治癒力を高めることで、医療に貢献するものです。施術者による受療者へのリズミカルな物理的、力学的刺激により、生命力が引き出される、同時に、語り掛け、術者の人間性の発露が大切で、これらの働きがあいまって見事な療術が成されると、筆者は考えます。

 受療者への慈しみ、慮る心が、施術と言葉を介して受療者の体と心に届き、生命のリズミカルな動きを取り戻し、生命力を与えるのです。そのために療術に携わる人は明るく、強く生きる、健康であることが要請されます。療術は、健康的な人間パワーと施術力の両者があいまって、病める人の心と体に心地よい、リズムを与えるのだと、私は考えます。療術に携わる皆様が、コロナ禍にめげずに、元気で療術を遂行されますように、切に祈ります。

 

■ご挨拶

昭和63年5月、療術に関する研究及び療術に携わる者の知識技能の向上等を目的として財団法人全国療術研究財団が発足。その後24年の歩みを経て、平成25年4月、内閣府の移行認可を受け、一般財団法人として再発足しました。
財団としては療術に関する研究として療術の有効性、安全性、独自性等についての医学的研究を推進するとともに、知識、技能の向上を図るための研修活動を実施していく所存でございます。
今後、より一層研究活動、研修内容の充実を図り、優れた療術師を世に送り出し、国民の健康保持に貢献して参りたいと考えております。

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